農事組合法人 ふかせ
「農事組合法人 ふかせ」は、栽培面積33.44ha・9棟のハウスを保有する農業法人である。「深瀬地域の農地は、みんなで守り、そして次の世代へ!」を基本方針に平成20年に設立した。栽培作物は、お米、ミニトマト、レタス、もち麦、広島菜など、多岐に渡っている。
今回は、代表理事の中村計助さん、理事で副組合長である浅井澄夫さんに、お話を伺った。
「1件1件訪ねて、法人化に向けて説得して回りました。」
「農事組合法人 ふかせ(以下ふかせ)」の設立には、2つのきっかけがあったという。
1つは、地域の農地が荒れてきたということ。
設立前の深瀬地域は、それぞれ個人が、専業もしくは兼業農家として、農地を管理していた。しかし、都市部に生活の基盤がある世帯や、高齢化によって農地の管理ができなくなる世帯などが年々増えてきたことにより、農地が荒れていく様子が目立つようになってきたという。
2つ目は、深瀬地域に圃場整備の話が持ち上がっていたことだ。
元々平成10年ごろからその話は持ち上がってはいたが、国の補助を受けられる条件として、農業の法人化が挙げられていた。当時各地で、国の補助で圃場整備が行われていたが、農業の担い手不足で、圃場整備後であっても耕作されなくなった土地が増えていることが問題視されていたからだ。圃場整備後の農地管理を可能にする次世代の担い手に、受け継げるような基盤作りを求められていたのだ。
「親世代から受け継いだこの深瀬の地域を守れるか、ということを考え、法人化を決意しました。深瀬地域の世帯1件1件訪ねて、法人化に向けて説得して回りました。」
と中村さん。説得の結果60世帯が組合員となり、平成20年「農事組合法人 ふかせ」は設立された。
農事組合法人という形
「ふかせ」は、農事組合法人という企業体を取っている。農事組合法人とは、昭和37年に農業協同組合法の一部改正により発足した法人で、その目的は、組合員の「農業生産についての協業を図ることによりその共同の利益を増進する」と規定されている。出資者は組合員と呼ばれ、原則として農業者に限られる。株式会社とは違い、総会における議決権は、出資口数に関係なく1人1票と平等である。
「農事組合法人の特徴は、組合員全員が平等の権利を持つと同時に、責任感もまた全員で共有できるところです。1人1票という仕組みは、地域についてみんなで考えることのきっかけを作ってくれます。」
と中村さん。
栽培作物について
「ふかせ」では、生産性向上を図るための有効な取り組みとして、輪作を行っている。水稲とキャベツの輪作、水稲ともち麦の輪作、ハウスでのミニトマトとレタス、チンゲンサイの輪作である。
その中で、力を入れているミニトマトは、平成28年から取り組んできた作物で、15トンの収穫量を誇る。品種はサンチェリーピュアで、病気に強く、光沢がありしっかりとした果肉が特徴だ。酸味のバランスがよく、サラダにぴったりとのこと。収穫量が増えてきた現在も、栽培方法は日々意欲的に試行錯誤をしているという。
「農業は、自然を相手にしているので、全て思い通りになるわけではありません。年々変化もあります。その経験を一つ一つ積み重ねて、試行錯誤していくのが農業の面白いところです。今年も3月にミニトマトを定植。従来の栽培法で育てるハウスの他に、新たな栽培法を実験的に取り組むハウスを設けました。」
と浅井さん。現状に満足することなく日々意欲的に試行錯誤されている。
「ゆくゆくは農場のリーダーとなり、地域を盛り上げてくれる存在になっていってほしいと思っています。」
「地域を守るため設立したこの「ふかせ」ですが、農場を運営していくためには、やはり若い担い手が必要です。現在この農場では3人の若手が働いています。ゆくゆくは農場のリーダーとなり、地域を盛り上げてくれる存在になっていってほしいと思っています。農業は、意欲次第でいくらでも成長していける分野です。いろんなことを経験し、じっくりと技術を身につけていって欲しいです。また、ビニールハウスや農業機械、土地など、大きな初期投資が必要となることも農業の特徴です。法人に入ることは、そのような設備が整った状態からのスタートになるので、より多くの経験が積むことも可能です。」
と若い世代の未来を楽しそうに話される浅井さん。その言葉からも分かるように、若手のサポートに対して労を惜しまない。
働かれている方々
「ふかせ」では、地域の維持発展のため、人材育成に力を注いでおり、現在3人の若い担い手が働いている。副農場長の浅井剛さん、ミニトマト担当の引地翔平さん、農業全般担当の上地真之介さんに、就農までの経緯など、お話を伺った。
浅井剛さんは広島県安芸高田市出身の44才。現在の若いメンバーの中では最初に「ふかせ」に入り、現在は、副農場長件水稲担当部長を担当。「ふかせ」に入られて8年目である。
「農業を始めたのは、この農場に若い世代がいなかったということで、誘いをもらったことがきっかけでした。その頃は会社員で、本格的な農業経験はありませんでした。農業に転職することに不安はありましたが、地元深瀬地域を守らなければという思いから引き受けることにしました。最初は覚えることも多く大変でしたが、大事に育てた作物がしっかり実っていく時の楽しさから徐々に農業にのめり込んでいきました。育てた作物が美味しいと言ってもらえることが今一番のやりがいになっています。」
引地翔平さんは広島県安芸高田市出身の25才。広島県農大卒業後、JAのトマト・レタス研修3年されたとのこと。現在は、ミニトマトとレタスを担当しており、「ふかせ」に入られて4年目である。
「農業を始めたきっかけは、おじいちゃん・おばあちゃんが農業に携わっていたということもあり、小さな頃から農業の楽しさに触れてきたことです。現在ハウスを任せてもらっていて、プレッシャーもありますが、工夫していくプロセスがとても楽しく、やりがいを感じています。栽培法で参考になるものがあれば、取れいれたりと常に試行錯誤しながら作業を進めています。」
上地真之介さんは広島県三次市出身の41才。前職は関東地方で建設業に従事されていたとのこと。農業がやりたいという希望を持っておられ、未経験ではあったが思い切り転職し、現在「ふかせ」に入られて2年目である。
「現在のお仕事に就いて、地域の方々と繋がりを持てることがすごく楽しいです。作物ごとの育て方の違いを学ぶことの楽しさや、実った時の喜びがやりがいとなっています。」
求める人材像
現在「ふかせ」では1人の若い担い手を募集している。
「農業未経験でも構いません。健康で根気があり、挑戦心を持っている方に来ていただきたいです。」
と浅井さん。
会社概要
社名:
農事組合法人 ふかせ
所在地:
〒739-1108 広島県安芸高田市甲田町深瀬878番地3
代表理事:
中村 計助
理事:
浅井澄夫 他 4名
業務内容:
農場の経営
設立
2008年
従業員数:
3名
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