JA広島北部野菜部会クリーンカルチャーグループ 合同会社 マスモト

「合同会社 マスモト」は、安芸高田市内に栽培面積97アール・10棟のハウスを保有する農業法人である。美土里町で「グリーンテック 増元」として水耕ネギ栽培をされてきた増元さんご夫婦(正信さん・美知子さん)、息子さんの慎也さんとで2020年2月に合同会社を設立した。

この度は、美土里町で水耕ネギの栽培を24年間続けられてきた増元さんご夫婦に、水耕栽培のことや、所属されている「クリーンカルチャーグループ」についてお話を伺った。

「水耕栽培を始めることは、未知の領域だった。」

アパレル企業で働かれていたご主人正信さんは、昭和53年、30才の時、実家の農家を継ぐべく帰郷した。就農14年目、パイプハウスで土耕栽培の青ネギを生産をしていた平成3年、台風19号が直撃した。この台風19号は、日本列島に甚大な被害をもたらした台風である。増元さんのところも例外ではなく、大きな被害を受ける。


「この時は、大変な思いをした。初めての災害経験でもあり、復旧させるため必死だった。」


パイプハウスが全壊するという大きな被害の中で、1日も早い復旧を目指し日々奮闘したという。台風到来から2ヶ月後、JAや地域の皆さんの強力な支援もあり、復旧作業を完了させた。

増元さんに大きな転機が訪れたのは、この台風の大きな被害からやっとの思いで復旧を果たし、まさにこれからという時だった。

JA営農指導員さんから一緒に水耕の青ネギ栽培に取り組んでみないかとの話が持ち上がった。当時、水耕栽培は存在していたが、決して一般的ではなかった。


「水耕栽培を始めることは、未知の領域だった。」


ここで水耕栽培に踏み出すことは、ゼロからのスタートを意味する。

それでも水耕栽培に踏み切ったのには、増元さんにあった一つの思いからだった。


「当時、中山間地域で独り立ちするには、専業農家という選択肢より、外へ勤めに行くのが主流だった。そんな中で、専業農家として、この土地を使って、独り立ちしたいという思いがあった。」


そんな思いから、増元さんは水耕栽培に積極的に参画することとなった。

平成4年に「クリーンカルチャーグループ」が発足、設備の開発や栽培ノウハウの研究、共同で出荷調整会社を設立するなどして、現在に至っても尚グループで水耕ネギの発展に取り組んでいる。



グループの力はすごい

「クリーンカルチャーグループ」は、農家の安定した仕事の確保と、生計が成り立つ仕組みづくりを目指して、平成4年に設立された。設立当時7名からスタートしたグループは、現在19名のグループメンバーが在籍し、それぞれが個人農家(法人含む)として水耕栽培の青ネギを中心に栽培している。

このクリーンカルチャーグルーブの取り組みとして、メンバーの出荷調整作業の負担軽減を目的とする出荷調整会社を共同経営するという特徴を持っている。選果や袋詰めなどの出荷に必要な作業を生産者から引き離すこの仕組みは、生産者が生産に集中できるようにすることで、栽培面積拡大を可能にしてきた。

合同会社マスモトは、創立当初からのメンバーで、グループの存在なしには、経営を続けられなかったという。


「ハウスのビニールが飛んだら、メンバーが駆けつけてくれて、修繕してくれたり、出荷量が足りない時はお互いに助け合ってきました。」


このように支え合いの関係で成り立つクリーンカルチャーグループを維持発展させていくために、グループは若い世代を育てる人材育成に力を入れている。


「年間通して栽培できる水耕栽培ネギに魅力を感じる若者は多く、そんな就農意欲のある若者を、グループでは2年間研修生として受け入れています。そこで、栽培技術、農業経営の知識などを身につけた若者が、グループを盛り上げてくれています。」


そんな仕組みづくりが、新規就農者を輩出し、グループを発展させてきた。



水耕栽培について

水耕栽培とは土を使わず水と液体肥料(養液)で植物を育てる栽培方法である。ハウス内の温度、湿度、光量など野菜に最適な状態に保ち、養液を衛生的に管理し、年間を通して計画的な栽培ができることが特徴だ。

クリーンカルチャーグループでは、この栽培方法で使用される”ロックウールマット”、”パネル”、”ベッド”、”レール”などの設備のほとんどが、水耕ネギ専用に特注で作られている。


「効率化するために、長い年月をかけて試行錯誤してきた。それは今も続いている。」


グループで共同開発したこれらの設備は、グループ内で同じ品質のネギの生産を可能にし、安定した生産量を確保してきた。また、大量のコンテナを運ぶことのできるレールをハウス内に張り巡らせたり、腰を曲げることなく作業できる高さのベッドなど、身体的な負担の軽減がいたるところになされている。


水耕栽培の青ネギは、効率化や安定供給できるというだけではなく、味にも特徴があるようだ。

「水耕栽培で育つ青ネギは、苦味少なく、甘みがあります。辛みも少ないので水にさらす必要がなく、サラダに最適です。」と増元さん。



一日のスケジュール

水耕ネギは、年間通して栽培できることから、毎日収穫・播種・定植の作業を1日に行い、ハウス内を効率的に使って、栽培している。


▼ 起床と収穫作業

早朝の5時頃起床し、7時頃(夏場は6時30分頃)に収穫作業開始。

並行して定植作業を行う。


▼パネル・ベッド洗浄作業

8時30分頃、収穫作業が終わると、早速トラックで選果場へ運搬。

ハウス内ではネギが植えられていたパネルやベッドを洗浄。


▼ ベッドの調整・パネル設置

11時ごろ、次の日の定植作業が行えるよう準備。


▼お昼休憩


▼ 播種作業


▼ 加工場から戻ったコンテナの掃除


▼ 15時 終了


基本的に1日の仕事はこれで終わりになることが多いが、次の日の準備など引き続き作業をすることもある。また季節にも左右されるため、タイムスケジュールを調整している。




会社概要

社名

合同会社 マスモト


所在地

〒731-0542 広島県安芸高田市吉田町相合457番地3


代表者

増元 慎也


業務内容

農園の経営(水耕青ネギ栽培)


設立

2020年2月27日


従業員数

4名 

akitakata.nougyou

「akitakata.nougyou」は、安芸高田市で農業に従事している農家さんに伺って、私たち消費者の元へが届く農産物が、”どんな人”が、”どんなところ”で、”どんな方法”で、”どんな思い”で、作られているのかを、安芸高田市の地域性と共に紹介するウェブサイトです。

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